諏訪地域で生まれ育ち、若い頃は東京で劇団員や映写技師を生業としていました。全国の学校を訪問して芝居をしていたこともあります。その後、帰郷し、茅野市に誕生した公共施設の茅野市民館で立ち上げから15年ほど働き、定年退職をした現在も嘱託職員として勤めています。

エコラ倶楽部に参加したきっかけは「アトリエデフ」での家づくりでした。いくつかの工務店を巡ったなかで、アトリエデフの内覧会では新築特有の接着剤の匂いなどを全く感じず、木のいい香りがしたのです。見積もりはけっこういい値段でしたが、一生に一度の家づくりならば気に入った工務店にしようと「アトリエデフ」への依頼を決めました。

面白かったのは、工務店なのに、そば打ち体験や味噌づくり、畑に大豆を蒔く農作業など、いろいろな企画に誘ってくれることです。家づくり=周辺の環境や暮らしも含めて提案するコンセプトがユニークで、参加するなかで多くの人と出会うこともできました。

薪ストーブのある暮らしも提案していただき、エコラ倶楽部に入会すれば、原村の森での間伐作業に参加して薪を分けてもらえると聞き、すぐに会員になりました。そして、地元出身であることや、これまで茅野市民館で「アトリエデフ」が映画上映をしていた縁もあり、理事に就任しました。

この地域は中途半端な田舎で、僕らが子ども頃の時代と違って、子どもたちが森の中で自然体験をする機会がなかなかありません。地元の人にとって、山は身近でありつつ、森に入ることはあまりなく、自分たちの地域の財産には意外と無関心です。だからこそ、エコラ倶楽部のような活動をきっかけに森に遊びに来てもらい、地元の自然の魅力を再発見してほしい。子どもたちには「エコラの森のなつまつり」でなにか特別なことをしなくても、僕らのような大人たちと森で遊んだり、家族で木を切ってみたり、木が倒れる様子を見たり、植物や昆虫にふれたりと、さまざまな体験を通して思い出をつくってほしいと思っています。若いお父さん、お母さんたちも、きっと幼少期に森にふれる機会は少なかったことでしょう。親子で森の中で一日過ごし、クタクタになってぐっすり眠る。そんな経験をした子どもたちが「また森に行こう」と思ってくれたら。それが、最近の一番の思いです。

かくいう僕だって、若い頃は「こんなところは嫌だ」と東京に出ていったクチです。都会の生活も楽しくはありましたが、いまはやはり、自然とともにある生活のサイクルはいいなと感じています。人びとの動きが都会と全然違いますし、さまざまな活動を通じて、この地域が好きで移住してきた人たちと出会って「素敵な地域だね」と言われたらうれしいものです。八ヶ岳がよく見える家の暮らしも、いいところに住んでいるなと実感します。こういう思いを、もっと多くの人に共感してもらえたらうれしいです。

森は整備しないとどんどん荒れていってしまいます。「アトリエデフ」ではいま、森林整備だけでなく竹林整備にも取り組んでいて、どちらも小さな活動です。しかし、見てくれている人は必ずいます。時間はかかりますし、あえてこちらから一緒に活動しようと積極的に働きかけることはありませんが、面白そうだと参加してくれた人から、自然なかたちで地域のなかに活動が広がっていったら。そうして地元の人の意識が変化していくことが、これからの展望です。