長野県の北端、小谷村の限界集落・大網地区で、地域の暮らしの知恵や技術、伝統、人のために“ずく”(やる気)を出すことなど、ここに暮らす人々の気質を次世代に受け継いでいく「くらして」の活動をしています。林業や炭焼きなどの山仕事と、田畑の仕事、伝統食の栃餅づくりなどに取り組んでいます。

私は以前から、山での豊かな暮らしを受け継いでいくためには、幼いうちから森や人に関わり、楽しさを知り、思いを育てられる場が必要だと感じていました。そんなことを考えていた2014年のある日、SNSで「くらして」の活動を知った大井さんが、私たちがはじめた体験交流施設「つちのいえ」に来られ、いまを生きる子どもたち、未来の子どもたちに向けた森の活動について話すうちに意気投合しました。それが、エコラ倶楽部との出会いでした。いまでは「くらして」として原村の「エコラの森」での活動に参加し、昔ながらの林業の技も披露するほか、2016年からは、エコラ倶楽部とともに大網の森に「かもしかのもり」をつくっています。

この「かもしかのもり」は「くらして」の師匠である“大網のおじちゃん”に私たちの思いを相談するなかで案内してもらった森です。師匠や地域のお父さん、お母さんたち、そしてエコラ倶楽部の会員の皆さんに協力をいただき、整備を進めてきました。大網の杉を使った素敵な手づくりの遊具なども設置されました。何の変哲もない普通の森が、集い遊び学べる森へと生まれ変わったのです。さらに、つくりはじめた3年目からは、大井さんの提案で「かもしかのもりまつり」というイベントも開催しています。あわせて「エコラのなつまつり」では木登り体験も実施しています。

エコラ倶楽部でのやりがいは、いまを生きる子どもたち、未来の子どもたちのために、共感してくれる方々とともに場をつくっていることです。場づくりは大人の意図的なかたちになりすぎないように、安全は守りつつも、子どもたちが自発的に自由に楽しめるよう、見守ることを大切にしていきたいと考えています。子どもたちが成長とともに森を自分たちの居場所ととらえ、自らの手で何かやりたいことを見つけていってもらえたら。基地づくりでも、家づくりでもいい。森の中の危険も含め、自分たちで考え、日常的に友だちと遊びに行く場、家族で過ごす場になればいいと思っています。

そして「かもしかのもり」に関わっていただいているたくさんの方にもっと森を開いていき、ここを訪れた人が、この森でやりたいことを実現できるように活用していただけたら楽しいです。

私たちの周りには、大工や屋根屋さん、芸術家……。たくさんの専門家がいます。一風変わったそうした大人たちに、子どもたちが触れられる場もつくっていきたいです。

私は野外活動が盛んな地域で生まれ育ち、幼稚園や学校の教室が森の中にありました。その影響を大きく受け、その経験に助けられてきました。子どもたちにも、森や人、自然とふれあうことで、森とはどんなものか、友だちとどのような時間を過ごすことができるのかを感じる機会を贈っていきたいと思っています。